流浪の弁護士 林朋寬のブログ 〜 転石コケむさず
【憲法記念日】商売をする自由
弁護士林朋寛
2013年05月03日 18:11
日本で、事業活動をするのは基本的に自由です。
それは、日本国憲法で、営業の自由(22条1項)や財産権(29条)が保障されているからです。
だからこそ、日本は、資本主義国・自由主義国の一員となります。
人権は他者の人権との調整が必要ですから無制限に認められるものではありませんし、
営業の自由や財産権は、他者の社会生活との関わりが大きいですし、社会経済全体の政策的な考慮も必要ですので、
ある程度の規制は国家権力(法律や行政権の行使等)によって受けます。
しかし、営業の自由や財産権が、法律や行政権(政府や地方自治体)によって、不合理に制限された場合は、
日本国民は、法律を作る国会や行政権を行使する内閣から
独立した
裁判所に訴えを起こして、
その具体的な事案が、国民の営業の自由や財産権を国家権力が法律や行政で侵害していないかを判断してもらうことができます。
人権として営業の自由や財産権が憲法上尊重されているからこそ、日本国において、
自由に事業活動ができます。
自由民主党は、日本国憲法の改正草案を発表しています。
(最近では、憲法を改正しやすくしようと、憲法96条1項の改正を先行することを主張しているようです。
第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
この点の問題については、岩手県の小口弁護士のブログをご紹介します。
http://oguchilaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/96-023c.html
)
自民党の改正草案は、基本的人権の尊重を後退させそうな、かなり問題のあるものです。
個別の人権である営業の自由や財産権の問題の前に、人権保障の総論の段階から規制しやすい方向に向かっています。
人権保障の総論である11条で規定された「国民は、すべての基本的人権の享有
を妨げられない。
」との規定を、自民党草案では、「国民は、全ての基本的人権を享有する。」として、人権の享有(=生まれながら身に付けていること)を妨げないという国家に対して人権の侵害を禁止を命令した部分をわざわざ削除しています。
また、12条は次のとおり規定されています。
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に
公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
この「公共の福祉」という言葉は、今では、国民の間での人権の調整の原理と考えられています。
しかし、自民党草案は、「国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、
常に公益及び公の秩序に反してはならない
。」として、人権の調整というよりも、人権と違うレベルの「公益」とか「公の秩序」といった、国家側が都合良く構成した公益・秩序というものの下に”常に”置かれるということになります。
さらに、憲法は第10章
最高法規
において、次の97条を置いています。
第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
自民党草案は、この基本的人権の保障を宣言した規定を全て削除しています。
営業の自由は、職業選択の自由の一内容として認められています。
第二十二条 何人も、
公共の福祉に反しない限り、
居住、移転及び職業選択の自由を有する。
自民党草案は、この「公共の福祉に反しない限り」という文言を削除しています。
これは、無限定に居住・移転・職業選択の自由を認める案のようにも見えます。
しかし、上記のように、そもそも、基本的人権・自由は、一般的に「常に公益及び公の秩序」により規制されるのですから、居住・移転・職業選択の自由の保障が拡大したというわけではないと言えます。
個人の有する財産上の権利の保障と私有財産制を憲法29条1項は保障しているとされています。
第二十九条 財産権は、
これを侵してはならない。
しかし、自民党草案では、
第二十九条 財産権は、
保障する。
として、財産権保障の規定の文言を弱めています。
さらに、29条2項は、以下のとおり規定され、国民の財産権の調整を図っています。
2 財産権の内容は、
公共の福祉に適合する
やうに、法律でこれを定める。
自民党草案は、公共の福祉に適合するということから、「公益及び公の秩序に適合するように」と変えています。これは、財産権の調整を超えた規制を容認する方向での改定と思えます。
裁判官の報酬については、その任期中は減額できないことになっています(79条6項、80条2項)。
これは、司法権を構成する裁判官が、報酬を減額されるということを利用して、立法権(国会)・行政権(内閣)といった政治的な方面からの
圧力が司法権(裁判所)にかからないようにして、三権分立を保障
しようという仕組みです。また、裁判所内部においても、個別の裁判官が報酬に関して
圧力を受けないように裁判官の身分を保障
して、法律と良心に基づいた裁判を行うことを保障した仕組みでもあります。
しかし、自民党草案は、一般の公務員と同様に減額できるように変えようとしています。
これは、裁判官の身分保障を揺さぶって、裁判所への圧力を増そうというものではないかと思われます。
国民の自由が不合理に国家によって制限された場合に、憲法に基づいてその救済をする役割の裁判所に対し、政治的な方面からの圧力が掛けられやすくなるということは、国民の自由の救済の仕組みが弱くなるということになってしまいます。
以上のように、ざっと自民党の改正草案について、営業の自由・財産権の保障のいう観点から述べました。
自民党の改正草案は、
自由な事業活動をしようという日本国民にとって
も、有害なものというべきです。
このような改正草案を掲げていながら、さも中小事業者等に対していい顔をしているのは、不誠実だと思います(憲法や自分の党の改正草案を見てない・理解してないという人も多いのかもしれませんけど、それはそれで問題でしょう。)。
とくに、弁護士である自民党の議員などは、改正草案について分かっているでしょうから、その上で、さも中小企業等の味方を装うのは、あまりに背徳的であると思えます。
一人一票訴訟で明らかになったように、衆議院議員も参議院議員も、
違憲状態の選挙で選出された者
に過ぎません。
(一人一票訴訟について
http://oki78.biz/hitoriippyou.html
)
現在の国会議員は、憲法に基づく議員としての正統性に問題がありますし、
裁判所から指摘された
憲法上の問題を速やかに改正できないという点で、国政を担う能力に欠ける人たち
です。
そのような資格も能力も欠く”国会議員”が、国会議員の選出の根拠というべき憲法について改正を言うべきではありません。
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カフー法律事務所
http://oki78.biz/index.html
沖縄県那覇市楚辺1−5−17 プロフェスビル那覇4階
電話098−853−4320
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